「右手の握力が少し弱いのと、右足の反応が鈍い。全体的に右側の動きが遅いから、良く見ておいてくれ」
「わかりました」
整備士長に指示を与えると、イザーク・ジュールは自分の愛機であるモビルスーツを見上げた。初めて自分の愛機と呼べるものに乗ったのは七年前になる。愛機とはいっても、それは地球軍から奪ったものではあったが。あれから 何度目の専用機体になるのかと考えたところで、充分片手で足りる数だ。戦争というものがなければ、機体は損傷することもなく消耗も激しくはない。イザークは近くにあった空のコンテナを上下逆にしてそこへ座る。
モビルスーツの間を忙しなく動き回る整備士たちとは、随分と気心の知れた仲だ。特にイザークと年齢の近い者たちからは「隊長の奢りで」と食事に連れまわされている。
「隊長」の任を受けてから七年。その肩書きを背負った当初は、自分の隊をまとめることばかりに目が向いていた。
が―――。
軍は兵士だけで成り立っているわけではない。モビルスーツ一機を造り上げるために関わる人がいて、それを整備する人がいる。ザフトに所属している全ての人と接することは難しいが、イザークは出来る限り沢山の仲間と、互いの顔と顔が見える場を持つようにしてる。彼らと話を交えるのも大切で。
仲間なのだ。
もともとコーデネータ自身、仲間意識が強いが、軍という少し特殊な環境に属している分、互いを信頼する気持ちは大きい。もともとザフトは市民による自衛軍だ。今でこそ職業軍人ではあるが、かつてイザークがそうであったように、暗黒の宇宙に浮かぶ美しい砂時計の形をした故郷を護ろうと、まだ年若い少年少女がアカデミーの門をくぐる。
―――護る。
イザークにはその気持ちが強い。過去の大戦を経験している者は、イザークと同じ想いを抱き続けていることだろう。
戦争があった。敵がいた。闘わなければ、故郷がなくなってしまう恐怖があった。
でも今は違う。否、本当に違うのだろうか。
あの戦いを生き残り、軍の白い制服を着続けているからなのか。
時折、無性に祈りたくなることがある。祈ったところで、現実が変わることはないのだ。
それでも。
ただひたすらに、平和を祈る。
幼い表情の兵士たちが、命を奪い合うことのないよう、命を散らすことのないよう。
平和であれと願い祈る。
シュミレーションの中の敵はシュミレーションの中のまま。戦場という地獄に、往復切符は望めないのだから。
経験をしなくて済むものは、経験をしない方がいい。
そう考えてしまう自分は随分と甘いのだろう、とイザークの唇が笑みの形になる。地球との定例会議が終わるまで、なかなか時間が取れないが、機会を作って整備士たちと飲みに行こう。
同時に。
「あいつ」とも会っていないなと思う。
やはり多忙を理由に「また今度」と言い続けている。このままでは、もう来なくてもいい、と言われるのも時間の問題かもしれない。定例会議が終われば休暇も取りやすい。今度こそ会いに行く約束をしよう、と心に決めた。
「あれ、イザークじゃん。帰ってたんだ、お疲れ」
騒がしさの中に混じりこんできた声に、イザークの視線が動く。互いの眼が合ったとたん、さほど大きくはない何かが投げられる。弧を描いてイザークの手に収まったものは、ひんやりとした缶コーヒーだ。
「さっき、食堂のおばちゃんに貰ったばかりだから、冷えてるだろ。お前にやるよ」
もう一本あるんだ、と言うディアッカの手には、同じものがあった。
「あぁ、貰っておく」
「どうだった?例のコロニー」
イザークの横に立ち、問いを落としてくる親友に、彼は小さく息を吐く。
例のコロニー。
プラントと地球との共同出資により建設中のコロニーのことだ。正式名称がまだ決まっていないこともあり、「例のコロニー」やら、「共同コロニー」などで呼ばれている。来月行われるプラントと地球間の定例会議で視察に含まれているそこは―――。学園都市だ。
ナチュラルとコーディネータが、共に学び共に成長する。終戦後の問題として、教育問題はやはり大きい。市民間の交流が深まりつつあるからこそ、共に学び遊ぶ環境は大事だ。それは終戦直後から言われていたことではあったが、感情という心の奥深い面が露見した。殺し合いをしてきた者たちが、流された多くの血を乗り越える時間が欲しかったのも事実。政府間協議で 学園都市計画は採択されたが、実際に着手するまでの紆余曲折は記憶に新しい。何より復興が優先されたこともあり、学園都市となるコロニーの建設が始まったのは、一年前のことだ。そのコロニーへの、各国代表の視察。イザークは代表団の警備と警護の打ち合わせのため、直接現地へ行っていたのだ。
「・・・まだ六割ってところだ。着工式を除けば、初めて地球とプラントの代表が集まって視察するからなのか、現場は妙な張り切りようだったぞ」
「へぇ〜、そりゃあ結構なことで。警備の調整も決まったの?」
「あぁ、当日の視察経路も人員の配置も決まった。明日はそれを議長に報告する」
「なるほど・・・。今回は会議だけじゃなく視察があるからなぁ。シン・アスカも護衛に駆り出されたとかで、機嫌がお悪いようで」
「シン・アスカが・・・?何故ヤツが機嫌を悪くする必要がある?任務だろうが」
眉間に皺を寄せるイザークにディアッカは苦笑する。
「あいつの場合、護衛の任務が嫌だってわけじゃなくて、護衛する人間が嫌ってヤツだから」
「・・・護衛する人間・・・?」 呟き首を傾げたイザークではあったが、直ぐにディアッカの言いたいことがわかり、大きく溜息を出した。
「馬鹿か、アイツは」
「まぁ、任務に支障はないっしょ。つーか、実は俺も好感は持てるけど、それ止まり・・・かも」
「ディアッカ・・・」
下から見上げてくるアイスブルーが、厳しさを含んでいる。諌めるような色がそこにあった。
ディアッカもイザークも、そしてシンも。
表立って言葉にすることはないが、五年前の「彼女たち」の行動を、肯定してはいない。世界は「彼女たち」が停戦へと導いた功績を、高く評価したが。それでも「彼女たち」が全て正しいとは思えなかった。今は亡き前議長のことも含めて、 複雑な想いがある。ずっと消えずに残り続けている。シンなどは、時折態度に出してしまうこともあるが、ディアッカやイザークは消せないしこりを抱えたまま「彼女たち」と接している。
親しいといえば、親しい関係。
けれど、親友と呼ぶには、距離のある中途半端さ。
相手がどう思っているかまでは、わからないが―――。
ただ「彼」がいるから、連絡を取り合ったり会いに行ったりと、定期的に顔を合わせている。
「なーんてね。そんな怖い顔すんなよぉ。俺、あいつらと、ちゃんと友人してるぜ」
「友人ね・・・。その友人をちゃんと護衛するように、俺からシン・アスカに言っておく」
「ははは・・・お手柔らかに頼むよ。てかさ、あいつも言ってたけど、定例会議の護衛に初めて就くヤツって多いのな。俺もまだやったことないし、今回も控え組みだし」
定例会議と呼ばれてはいるものの、今回が三度目だ。過去二回は地球のオーブが舞台だった。中立国であったオーブに白羽の矢がたったということもあるが、プラント側から地球でと申し入れを行ったのだ。
理由は二つある。一つ目は、戦後という意識が強い中で、宇宙へ上がった、宇宙へ上がらなければならなかった者たちが、地球の大地に降り立ちきちんと地に足をつけて話し合いを行いと思ったからだ。もう一つの理由は、地球の主要国代表者たちの中で、第一回目となる会議をプラントで開催することに、嫌悪感を表す者が少なからずいたこともある。特に連邦政府の難色は強く、 拭いきれない闇があった。「何故、我々が、宇宙へ上がらなければならない。地球に降りてくるのが、礼儀だろう」と囁かれる言葉にプラントが従ったわけではないが、互いの絆を深い結びつきへと変えるための第一歩を壊したくはなかった。そこで、コーディネーターとナチュラルが共に暮らすオーブが、第一回目の円卓会議の場として選ばれた。二度目もオーブだったが、その間に地球と宇宙の共同コロニーが竣工を迎え、 三度目となる今回は、そのコロニーの視察を含めてプラントでの開催と決まった。過去二回は地球であり、プラント代表者である最高評議会議長の護衛は、ザフトの隊長クラスがその任を勤めていたが、今回は会議の開催国である。加えてブルーコスモスが再び動き始めたという、不確かではあるがありがたくない現実が、より厳しさを物語る警備体制となっている。
「控え組みには、もしも何かが起きたとき、慌てることなく的確な判断を出せるヤツを選んでいる。暢気に構えているなよ。控え組みは重要なんだ」
「・・・わかってますとも」
「それに、定例会議の護衛が初めてだろうがなんだろうが、それ以外でも同じことを何度となくやっているんだ。護衛自体が初めてですってひよこはいないぞ」
「ひよこちゃんはいないけど、一年に一度の主要国会議だから、緊張する奴もいるんじゃないの?」
「緊張感は持っていてもらわなくては困る。特に今回はな・・・」
硬い響きを伴う呟きに、ディアッカはイザークをちらりと見る。苦々しげに眉根を寄せた親友がそこにいた。
「ブルーコスモスか・・・。奴ら、会議に合わせて何かやってくるかな?」
「それがわかれば、苦労はねぇよ。でも奴らも馬鹿じゃないし、今のところブルーコスモス自体、目立った行動はないな」
「そうなんだよねぇ。ブルーコスモスの強硬派のその一人が、たまたまオーブに行きましたって事実だけだもんな」
「・・・なぁ、ディアッカ」
「ん・・・?」
イザークは前を向いたまま、少しの間言葉を切ってから、これは俺の勝手な言い分なんだが、と前置きをしてから続けた。
「お前の言うように、今まで自国で大人しくしていた強硬派が、オーブに入国したってだけじゃ、世界は簡単に奴を拘束出来ない。オーブ政府は随分注意しているようだし、連合政府にとっても奴らは頭痛の種に違いないんだろうが、単にブルーコスモスっていうなら腐るほどいるんだ。俺は・・・奴らが 大嫌いだからな。もし奴らが何か事を起こしたら、俺は徹底的に奴らを潰す」
「イザーク・・・」
「こういうことを言えば、俺の方こそ危険人物になるのかもしれないけどな。俺たとコーディネーターを疎む奴らがいる限り、俺たちも俺たちを疎む奴らを疎む。ブルーコスモスの連中が、いなくなったわけじゃない。今は沈黙を守っているだけだ。でもその沈黙も、終わろうとしてる気がする・・・」
静かに流れる声が、ディアッカの胸に入り込んでくる。
あぁ、こいつは―――。
再び悪夢の世界が広がることを恐れている。
それはもちろん、ディアッカも同じ想いだ。二度の大戦を経験した者なら、尚更のこと。大切な人たちを失う哀しみも痛みも、ピリオドが打たれたはずなのだ。世界はもう、武器を選んだりしない。そう思っていても、もしもと考えてしまうのは、軍人だからだろうか。
「・・・大丈夫だよ。まぁ俺が言ったところで、何が大丈夫なんだって感じだけど。でもさ、大丈夫なんだよ。俺たちが、その大丈夫になるんだろ」
右腕を伸ばし、親指を立てて見せれば、イザークの口元が緩んだ。
「お前に説教されるとは思わなかった」
「説教っていうほどのもんじゃないんですケド・・・。弱音を吐くことも臆病になることも必要だと思うし、そういうの腹の中に溜めないで、ちゃんと言ってくれた方が、俺も微力ながら役に立てるかもしれないしぃ」
「いや、充分役に立っているから安心しろ。なにせ、俺に説教するくらいだからな」
「だーかーらぁー!説教じゃないっていうか・・・説教ついでに言うけど―――」
真顔になるディアッカに、イザークも笑みを消す。一つ息を吐いて、口が開かれる。
「・・・シンが言ってたんだけど、ブルーコスモスのことが、何で赤服止まりなのかって。俺はさ、別に赤服止まりでもいいと思ってる。軍全体が奴らのことで、ピリピリしちゃってだよ。そのピリピリ感が、ナチュラルの嫌悪へ繋がる可能性もあるわけだろ。知ってる俺らだけで事が片付くなら、それで充分ってね。けどさ、お前の言うように、奴らが沈黙を破ったらどうなるのか、予測不可能でもあるわな。だから もしもが起きたとき、軍の中で互いに不信感が生まれやしないか心配。シンもさ、周りに秘密を抱えているようで、嫌だってさ」
低く落とされる胸の内を聞きながら、イザークはモビルスーツの整備に勤しむ仲間を視界に捉える。ディアッカの言いたいことは、充分過ぎるほどわかる。考えたくもないが、万が一起きて欲しくないことが起きてしまったとき、軍全体で動くことが出来た方が良いに決まっている。それでも全員に通達が出ないのは、ブルーコスモスが不気味なほどに静かだということもある。見極めがつかないのだ。
「・・・上層部も奴らが本当に何かを仕掛けてくるのか、判断が出来ないんだろ。上層部だけじゃない、誰にもわからないことだから、俺たちに今まで以上に監視しろってことだ。逆に、判断が出来ないからこそ、全体に伝えた方がいいのかもしれんがな」
「分かれ道だよなぁ。でも、来月は定例会議があるじゃん。どうすんの?」
「それまでには、間接的に言うのかもしれんが、何か起きたとして、へっぴり腰で動けないっていう連中は、ここにはいないだろ。さっきお前が言ったことだぞ。大丈夫だってな」
「あら、そう来たか。てか当然デショ。俺ら強いから。プラントを血で染めるようなことは、絶対にさせないってね。でもさ―――」
イザークと同じように、自分達と年齢の近い整備士たちを見つめながら、柔らかい口調で紡ぎ始める。
「あの戦争の後で、ザフトに入って来た連中はさ、人に銃を向けないまま今日まで来てるじゃん。そりゃあ、軍人として、プラントを護るって意識は強いと思うよ。けど、実際に引き金を引くには、勇気がいるよな。もちろんそういう勇気は必要だし、そのためのザフトなわけだし。なんだけどさぁ、戦いがなくなって、穏やかっていう日常だからこそ、たとえ軍にいても人に銃を向けないまま退役出来ればいいよなぁってさ。引き金を引く重さは、ここにいる全員が知る必要はないって思っちゃうのは、下手な親心すぎて、 後輩クンたちには迷惑かもしれないけどね」
優しい横顔に、イザークは眼を見開く。まるで自分の心の中を、言い当てられたようだ。考え方が同じということか。ならば、それだけ自分達は、変わったのだろう。懐かしさと痛みを伴う昔とは、大違いの甘さだ。
ブルーコスモスという、コーディネーターにとっては、あまり歓迎の出来ない組織の現状を、軍全体で知ることが一番良い。上層部の見極めのつかなさは、彼らの甘さだとも言える。
が―――。
イザークもディアッカも、どうしようもない感情を背負い、どうしようもない殺し合いの渦を生き抜いてきたからこそ思ってしまう。不必要な感情を持つのは、あの大戦を経験した自分たちだけでいい。銃の重みよりも、平和を尊び、過去を繰り返さない強い想いと行動力を持って欲しい。
本人たちを眼の前にして、直接言ったことはないが、言えば言ったで「何言ってるんですか」と彼らなりの気持ちを力説されそうではある。
イザークはコンテナからゆっくりと立ち上がった。
「気が合うな。下手な親心なら、持ちすぎて困っているところだ。可愛い可愛い後輩どもに言えば、呆れるだけでは済まされないかもしれないがな」
「あ・・・やっぱお前もそう思う?お互い人間が丸くなったよねぇ〜」
照れたように笑うディアッカに、そうだなと頷き返す。
「でもさ、本当に考えたくはないんだけど、もしも何かが起きたとしても、ここにいる連中は銃を持つことを恐れちゃいない。シュミレーションとは全く違う実践にも、気後れしない奴らだから安心してるけど、やっぱこれから先もずっと何も起きるなって思うよな」
「あぁ、俺も平和を強く願う・・・」
流れ出る汗を作業服の袖で拭っていた整備士の一人が、二人を両眼に捉えて会釈をする。まだ成長過程の少年だ。ディアッカは軽く右手を挙げ、イザークは微かに目元を和らげることで、それに応えた。
格納庫内で響く重機音に耳を傾けながら、暫し無言で立ち尽くして。ふいに他人事のように、イザークが呟いた。
「あぁ、そういえば、いつもより人が少ないな。夏休みだからか・・・」
「お前、ちゃんと覚えてたのね。軍人の俺たち含めて世間一般夏期休暇!夏休み!故郷帰郷!宝くじ!」
語気を強めただけではなく、ふふふと少々怪しげな笑み付きのディアッカに、馬鹿度が上がったなと白い視線をイザークは送る。
「夏期休暇と夏休みは、言い方が違うだけで同じだ同じ。故郷帰郷はわからなくもないが、宝くじは意味不明すぎて馬鹿らしさが素敵だぞ」
「・・・突っ込まなくてもいいのに、突っ込んでくれてアリガトウ・・・じゃなくてさぁ!!俺の夏休み申請を承認しろ!良いことあるぞ!」
「力説されても、嬉しくもないし、良いこともないな。それより仕事だ。休みなら会議後にしろ」
「心の冷たい奴だよねぇ〜。いいよなぁ。メイリンは今週末から夏休みで、ラクス嬢のところに行くんだって。いいよなぁ〜」
心底羨ましげに言うディアッカに対してというよりは、彼から出された固有名詞に、イザークの眉がぴくりと動いた。何かを考えるように両手を組む。
「メイリンはラクス嬢のところに行くのか・・・」
「そうそう、行くんだって。だからついでに、俺も土産を渡してくれるように頼んじゃった」
土産というのは「彼」のためのものだと直ぐにわかる。自分からの土産を受け取る姿を想像でもしているのか、ディアッカの頬が緩んだ。イザークも会議が終わったら、彼に会いに行こうと思っている。
「彼」は。
イザークだけではなく、イザークたちにとって、大切で大切でとても愛しい存在だ。過保護すぎるほど、甘く接してしまうのは。 彼が、自分たちの宝物だからだ。
メイリンは夏休みを利用して、「彼」に会いに行くという。ディアッカももちろん、会いたいに決まっている。彼の休暇申請は、イザークの手の中。この数ヶ月、まともな休暇が取れていないのも事実。加えて、あれだけ羨ましいと言わんばかりの声を聞かされては、と呆れ交じりの溜息も出てしまうが、たまにはいいかと思う。
「・・・わかった。お前に休みをやる」
「・・・へ?」
突然のことに、ディアッカはぽかんとしてる。
「へ、じゃない。休暇だ、休暇。ただし三日間だ。俺は会議が終わったら休みを取るから、その時はお前も付き合え。特別すぎる休暇をやるんだ。ありがたく思えよ」
ディアッカの肩を軽く叩き、イザークは格納庫の外へと足を向ける。さらりと流れる銀の髪を、ディアッカは慌てて追いかけた。
「マジ?休みホントにいいの?」
「マジだ、マジ。メイリンと一緒に行ってこい。ただし三日間だけだからな」
「おう!三連休をありがたく受け取らせていただきます。イザーク愛してるぅ〜」
「愛はいらないし、気持ち悪いから語尾を伸ばすな!」
「そんなに怒るなよ、つれないなぁ。てか、マジでサンキュー!」
本当に嬉しそうな笑みを浮かべるディアッカに、イザークのアイスブルーの眼が、柔らかなものへと変わる。
「彼」へと繋がること全てに、イザークたちは必要以上に、呆れるほどに、優しくありたいと思っている。
彼らが大切に護り、優しく抱き締める藍色の宝物である小さな命。
久しぶりの再会は、もうすぐだ。





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